帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹とは・帯状疱疹後神経痛とは
水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると「みずぼうそう」になります。水疱瘡の際に神経に潜りこんだ水痘・帯状疱疹ウイルスが、免疫力の低下などにより再活性化すると帯状疱疹として発症します。一般的な帯状疱疹はピリピリと痛みを伴う水疱が、神経の走行に沿って体の片側にできます。しばしば発疹の前に痛みが出てくることがあります。また発疹が引いたあとも痛みが3ヶ月以上、続く事があり、その状態を帯状疱疹後神経痛といいます。
帯状疱疹の予防
帯状疱疹は50歳以上になると発症しやすくなり、年齢とともに重症化しやすい傾向があります。帯状疱疹後神経痛の頻度も年齢とともに増加し、60歳以上はハイリスクとされています。また免疫抑制中の方などでは発症しやすくなります。そのため予防が重要になってきます。日本では従来の生ワクチンに加えて、最近、不活化ワクチンも発売されました。
帯状疱疹の予防接種
生ワクチン(ZVL: zoster vaccine live)
7,700円 / 接種回数 1回
小児の予防接種に使われるワクチンと同じもので、不活化ワクチンと比べて安価です。しかし、免疫不全の方・免疫抑制剤服用中の方には、ワクチン株由来の帯状疱疹を発症することがあるため、向いていません。(通常の免疫状態であればワクチン株由来の帯状疱疹を発症することは極めてまれです。1歳のお子さんに接種する水痘ワクチンはこちらです。)
不活化ワクチン(RZV: recombinant zoster vaccine)
44,000円(1回あたり22,000円) / 接種回数 2回
※2回目は1回目から2ヶ月空けて打ちます
先進国では帯状疱疹ワクチンとして標準的なワクチンです。帯状疱疹の発症予防・神経痛の発症予防について、生ワクチンと比べ効果が非常に高いとされていますが、強い効果があるため、腫れ、発熱、頭痛などの一時的な副反応も生ワクチンと比べておきやすいとされます。また生ワクチンが打てないような免疫不全がある方なども接種することができます。現時点で帯状発疹・帯状疱疹後神経痛の発症予防に十分なエビデンスがあるワクチンです。
帯状疱疹の診断と治療
診断・検査
チクチクとした痛みや、神経節に沿った典型的な発疹を視診で診断します。非典型的なもの、わかりにくいものもあり、当院ではデルマクイックVZV®という検査薬を用いて確定診断を行うこともあります。
検査は水疱の中身を綿棒で擦過し、抗原を検出します。
治療
発症後72時間以内の方は、内服による効果が見込めるため、抗ウイルス薬を7日間内服していただきます。治療中の病気などにより薬剤の選択が変わります。72時間以上経過していても、新しく発疹が出てきている場合や、併存疾患などにより抗ウイルス薬による治療をおこないます。痛みに対しては鎮痛剤を用いますが、一般的な鎮痛剤でも痛みが収まりきらない場合や睡眠に支障を来す場合は一時的に麻薬系の鎮痛剤を使うことがあります。
一般的な経過
水疱が7−10日で痂皮(かさぶた)化し、感染性がなくなります。発疹は色素沈着することがあります。20%以上の方が1ヶ月後も疼痛が続き、10−15%の方は発症後3ヶ月以上痛みが続く、帯状疱疹後神経痛という状態になります。こういった状態に対して当院では神経の痛みを和らげるようなお薬で継続した治療を行っております。
水痘・帯状疱疹ウイルスの感染を広げないために
水痘ワクチンを行っていない方や免疫抑制状態にあるかたに感染することがあります。一般的には帯状疱疹は水痘(みずぼうそう;水痘・帯状疱疹ウイルスの初めての感染時におこる全身に水疱をおこす病気)よりも感染性は低いとされますが、直接皮膚の病変を触れたり、皮膚病変からウイルスがエアロゾル化したものにより発症するとされています。痂皮(かさぶた)化した時点で感染性はなくなりますが、それまでは1)発疹をおおう、2)手をよく洗う、この2つを励行しましょう。